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まえがき

 グレーゾーンという言葉がある。黒でもなく,自でもなく,その中間
の灰色(グレー)をしている所という意味合いだ。だが実際には,「灰
色議員」などというように,疑わしいものや怪しげな部分,あるいは裏
社会を指す場合に使われる。

 「疑わしきは罰せず」が法律の基本なのだが,グレーゾーンは限りな
く黒に近い灰色として扱われる傾向が強い。これを限りなく白に近いな
どといおうものなら,ひんしゅくしきりである。
 
 だが,それでいいのだろうか。例えば道路交通法30条は,追い越しを
禁止する場所のひとつとして「上り坂の頂上付近」を規定している。上
り坂の頂上付近は坂のむこうからくる対向車が見えないから,追い越し
が禁止されるのは当然なのだが,坂とは何をいうのか,頂上付近とはど
のあたりをいうのか,道路交通法には規定されていない。
 
 仰角1度の道路は道路交通法の指す「上り坂」には該当しないだろう
が,何度からが坂道なのだろうか。仰角45度になれば間違いなく「上り
坂」であろうが,斜路の長さが何メートルから「坂道」になるのだろう
か。仮に45度の斜路の長さが30cmであるなら,坂道とはいわないはずだ。

 グレーゾーンとはこのことである。道路交通法は追い越し禁止の場所
を規定しているのだが,法律では規定しきれない部分が存在するのだ。
「ここは上り坂ではない」「いや,上り坂だ」「頂上付近ではない」「いや,
頂上付近だ」現場の交通警察官と運転者に認識に違いがあればこのよう
なことになる。グレーゾーンは怪しげな部分であったり,限りなく黒に
近いものではないのだ。

 税金の世界にもグレーゾーンがある。税法や通達では規定しきれない
部分だ。グレーゾーンは黒く見ようとすれば黒くも見えるし,白く見よ
うとすれば白くも見える。しかも税の世界は,売上,仕入,諸経費,資
産,負債,業種の違い,経営規模,経済変動などが複雑に絡み合ってい
るからグレーゾーンの幅は広い。そして,税務調査の多くはこのグレー
ゾーンが舞台となる。

 この本では,税務調査の現場を再現することにより,調査官はどこを
どう見るのか,これに対して会社側はどのような答弁をしたのか,その
結果どのような調査となり,どのような証拠書類が必要となって,どの
ような結末になったのかを記している。
 
 そして,調査官の指摘が本当に正しいものなのか,調査官はグレーを
黒といっているのか,グレーを白と見ることはできるのか,調査官を納
得させるにはどのような方法があるのかを解説している。
また,目次に工夫をしてある。ページ順の目次のほかに,科目別,状
況別にまとめた逆引き的な目次を設けた。売上と在庫が連動し,修繕費
と資産計上が表裏の関係にあるように,各項目が複雑に絡み合った中で
行われるのが税務調査だからだ。

 税務調査を本職としている調査官と,数年に一度しか税務調査を経験
しない法人とではハンディがありすぎる。税務調査の現場を再現するこ
とが,普段の経理処理を改善する手助けとなり,調査を受ける心構えの
一助となるものと確信している。
 
           平成14年5月10日   薄 井 逸 走



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